非行には見過ごせない理由がある


 人権派として有名な中山武敏弁護士が、自伝「人間に光あれ」のなかで紹介している小学5年生の男児が書いた「どろぼう」という詩があります。 

「父ちゃん 何し僕をどろぼうに行かするトか 悪いチ知っちょって 何し行かするトか・・・」

 福岡の筑豊は、かつて炭鉱労働者の町でした。  

 労働者である父親のなかには少ない賃金でも大酒を飲み、カネがなくなると我が子に盗みをさせた者も少なくなかったといいます。  

 非行には、見過ごせない理由があります。罪だけ見て、それを罰するのはたやすいことです。  大切なのは、問題の本質を見つめることです。 

 中山弁護士は1944年、福岡の被差別部落で生まれています。大学の夜間部で学び、司法試験に合格しています。  

 母親が廃品回収のリヤカーを引き、家計を支えていたといいます。差別されても、人間の良いところを見ることを母親から教わったそうです。 

 少年法の見直しを進める法制審議会は、9月にも最終案をまとめる予定だといいます。18、19歳の犯罪が厳罰化される見通しで、教育の視点が軽視されると更生の機会が奪われるでしょう。  

 詩「どろぼう」の子どものように、家庭環境が事件に繋がるケースは今も少なくありません。  

 弱い立場の人に寄り添い、その人生の軌跡から子どもを包み込む少年法の精神の大切さを改めて考えることも大事でしょう。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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