絶望しては負け


 映画史に残るチャップリンの「独裁者」で、独裁者になりすました〝理髪師〟が何百万の絶望した人々に、罪もなく迫害された人々にこう訴えかけます。 

「絶望してはならない。自由は滅びない」  

 6分間にもおよぶ演説は、民主主義の側から独裁への抵抗を呼びかけるものでした。  

 当時、ヒトラーを英雄視する人もいて、〝理髪師〟の演説に批判や脅迫めいた声もあったといいます。  

 この映画が撮影された時期、欧州ではナチスが猛威を振るっていました。イタリアやソ連などにも独裁者が存在していて、さらに大きな覇権を握る恐れもありました。  

 戦後も、ロシアや中国、北朝鮮など〝独裁者の存在〟は消え去ったわけではありません。欧州では、東欧の一部で命脈を保っています。  

 しかし、〝理容師〟の演説から80年が過ぎ、喜劇王の呼び掛けが欧州で実現に近づいているのかもしれません。 

「欧州最後の独裁者」と呼ばれるベラルーシのルカシェンコ大統領に対する批判が国際的に強まり、ベラルーシ国民の抗議デモが一向に収まらないのです。  

 古今東西の独裁には、自国民の迫害と弾圧がつきものです。ルカシェンコ大統領も対立候補を締め出し、弾圧してきたといいます。  

 しかし、コロナ禍を契機にベラルーシ国民の不満が噴出しているのです。 〝理容師〟は演説で、こう訴えています。 

「人々が強欲と憎しみと残虐さを克服したそんな世界へ、今、飛び始めた」  

 そうした世界へ、ベラルーシが自由に飛んでいくことを望みます。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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