安易に世相に与しない生き方


 「思考の整理学」がベストセラーになった英文学者でお茶の水女子大名誉教授の外山滋比古さんが7月30日、胆管がんでお亡くなりになりました。享年、96歳でした。  

 若き日、日米開戦前で白眼視されながらも敵国の言語だった英語を学ぶ道に進んでいます。  敗戦後、世の中は一転して英語や西洋文化が持て囃されています。  

 外山さんは、そうした西洋礼賛に染まらずに独自の思索を深めています。ある日、蚕を見習って生きていこうと決めたといいます。蚕は、桑の葉を旺盛に食べて純白の糸を吐き出します。  

 外山さんの著書「三河の風」には、こう書かれています。 

「秀才といわれた人が、すこし赤い本を読むと、赤いことばを吐く。黒い本を読めば、吐く糸は黒である。色のついたものは、ひととき美しく思えても、やがて色あせる」  

 外山さんは近代の思考に漬かった頭を刺激しては、なるほどと頷かせる論考の数々を残されています。  

 三河地方の愛知県寺津町(現在の西尾市)に生まれていますが、その徳川家康を生んだ地方には明治政府に冷遇された意識が残っていたといいます。  

 外山さんは大きなものに頼らず、安易に与しない気風「三河の風」に吹かれてきたと自認していたといいます。  

 合掌!  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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