自分のルールや秩序を相手に押し付ける愚


 道教の始祖の一人とされる荘子は、応帝王篇で有名な「渾沌七竅(こんとんしちきょう)に死す」という一節を残しています。  

 それは、人が大自然を理解する際の警句です。その内容は、こうです。  

 地上には南海の支配者と北海の支配者、中央の支配者「渾沌」がいて、「渾沌」には目や耳、口、鼻の7つの穴がありませんでした。 

「渾沌」は、ときどき訪ねてくる2人の支配者をよくもてなしました。2人の支配者は、何か「混沌」に礼をしたいと考えました。  

 そこで2人は、「渾沌」にも自分たちと同じ七つの穴を与えようと考えました。 

「人は誰でも7つの穴があり、それで見て、聞いて、食べて息をしている。渾沌には一つも穴がないので、一日に一つずつ穴を開けてあげましょう」  

 しかし、7日目に7つ目の穴を開けたところで渾沌は死んでしまいました。 

「渾沌七竅(こんとんしちきょう)に死す」が指している「混沌」とは大自然のことで、それに開ける穴は人が考えたルールや秩序のことだと解釈できます。  

 有限でチッポケな人が、無限の自然を理解し尽くすことは不可能でしょう。 「渾沌」をそのままにしておけばよかったのですが、2人の支配者が自分たちの秩序を「混沌」に押しつけた結果、図らずもその命を奪ってしまったのです。  

 これは政治や社会のルールや秩序にも当てはまることで、中国が香港に対する「一国二制度」に風穴を開けようとしているのも同様のことでしょう。  

 スケールは小さいですが、コロナ過での〝自粛警察〟や〝マスク警察〟のチッポケな行為も似たようなものです。   

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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