相撲の新ノーマルはコロナ禍の収束まで続く


 相撲の土俵の起源は、対戦する力士を取り巻く見物人の人垣に由来しているという説があります。  この観客の輪は「人方屋(ひとかたや)」と呼ばれ、力士がそこに押し込まれたり、投げ込まれたりすると負けとなっていたのです。  

 だが、見物人のなかには贔屓の力士のために手出しをする観客もいて、観客同士の争いが絶えなかったといいます。  

 そこで江戸前期の幕府の禁令を契機に柱を立てて縄を張り、やがて丸い土俵がつくられたというのです。  

 これを契機に、土俵が観客と分離された〝聖なる場所〟となったのです。  

 今でも土俵下の「溜席」、いわゆる「砂かぶり」で観戦する人には飲食や大声での力士への声援や写真撮影が禁じられています。つまり、土俵近くの観客も相撲という神事への参列者というあつかいなのです。  

 大相撲7月場所では、砂被りに観客を入れていません。升席に1人ずつの客、隣3つの空席を挟んだ椅子席の客には声援の自粛が求められています。  

 とにかく、応援は拍手だけという場所となっています。それでも、相撲ファンは半年ぶりの観客になれて感無量といったところでしょう。  

 2カ月前、三段目の勝武士が新型コロナ感染症で亡くなり、感染拡大が心配された相撲部屋での集団生活です。相撲界には江戸時代の疫病や大正時代のスペイン風邪に苦しめられた過去もあり、まさしく天敵ともいえる感染症なのです。  

 観客が「土俵」そのものだった時代から、お客あっての相撲という興行の形態は変わりません。   コロナ禍の今、それが収束するまで力士とお客の「距離をおいた協力」が求められる大相撲の新ノーマルが続くでしょう。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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