新型コロナウイルスの研究で続発する虚構の天空の城


 英国の作家チェスタトンは、こう述べています。 

「天空の城を築くのに建築の法則は通用しない」   

 この言葉は、捏造されたデータに基づく研究論文の冒頭に掲げられていたことで有名になっています。   

 1981年、生化学の権威ラッカーと大学院生スペクターがサイエンス誌に発表した論文は、がん発生のメカニズムに迫るようなノーベル賞級の発見が書かれていました。  

 しかし、論文発表の1週間後、その共著者の一人がスペクターによって行われた実験が捏造であったことを見つけます。  

 この論文の冒頭に掲げられた「天空の城」という言葉は、従来の常識を超えた画期的成果を表すものとして使われていました。  

 論文が架空のデータにもとづく〝天空の城〟だったのがわかった後、名声は木っ端みじんに打ち砕かれています。  

 世界の研究者が今、目の色を変えて競争を繰り広げている新型コロナウイルスの研究でも、英米の一流医学誌に掲載された2つの論文が使用していた患者のデータに疑義があるとして撤回されています。 〝

 捏造疑惑〟に晒された論文は、ハーバード大のメフラ教授が米企業の保有する世界各国の患者データを基に治療薬の効果を検証したものです。  

 しかし、ここで使われているデータの信憑性を問う声が起こり、調べるとデータベースの存在すらも疑われる事態となっているのです。  

 検証された薬はトランプ米大統領が推奨した抗マラリア薬で、世界的に話題にもなった研究でした。  

 この研究もまた、虚構の〝天空の城〟だったのでしょう。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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