コロナ禍後の「すばらしい新生活」


 90年ほど前に書かれた英作家ハクスリーの小説「すばらしい新世界」に、登場する未来社会の標語が載っています。 

「文明とは消毒である」

  この小説には、生殖さえも工業化された機械文明によって快楽と幸福とを強制された超管理社会が描かれています。 

 たとえば赤ちゃんは胎児工場で予防注射によって病気の恐怖から解放され、「文明とは消毒である」という標語も睡眠中の学習によって子どもに植えつけられます。  

 この「すばらしい新世界」で描かれる文明は、炭疽菌爆弾で汚染された大戦争後の世界で生まれたという設定です。  

 読後、この新世界を管理する統制官の言葉がコロナ禍後の新世界を連想させます。 

「万人の幸福が真理や美よりも重要である」  

 コロナ禍後のニューノーマル(新常態)は「すばらしい新生活」となり、ひょっとすると個人の自由や尊厳も無残に〝消毒〟されていくかもしれません。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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