漫画「アシュラ」が問うた人間性と罪悪


 漫画「浮浪雲」の主人公は、富士登山についてこう述べます。 

「富士山に登ろうと心に決めた人だけが富士山に登ったんです。散歩のついでに登った人は、ひとりもいませんよ」  

 その作者、ジョージ秋山さんが先日、77歳の人生を全うされました。  

 ジョージ秋山さんは、子ども向けギャグ漫画家としてデビューしました。1970年、少年マガジン連載の「アシュラ」で作風を一変させています。  

 主人公のアシュラは飢饉の平安末期、生きるために人を殺し、その肉まで食らいます。 「アシュラ」の登場人物には、特徴があります。それは、登場人物の瞳が目の上部にポツンと点で描かれているところです。  

 その目は恨みがましく、冷酷で非情に見えます。ただ、ときどき悲しく、寂しげにも見えます。こうした目が、複雑な感情が入り混じった作品をつくり上げていました。 

  テーマは人間性や罪悪への赦しですが、夥しい血と死体の山に大人でも目を剥くような作品でした。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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