巣ごもりで溜まった寂しさを開放する日


 コロナ禍で「3蜜」を避けることが提唱され、Jリーグやプロ野球、ライブ、コンサートも開かれていませんでした。美術館も映画館も閉まり、居酒屋やバーのネオンは消えて親しい者同士の食事会や飲み会もできませんでした。  

 在宅勤務の広がりで、社員同士が顔を合わせる機会も減りました。会えば会ったで、今度は飛沫感染しにくい距離ソーシャルデスタンス(国の推奨は2メートル以上)が求められました。  

 職場で同僚と話すときも意識しているでしょうが、何となく近づいてしまいハッとして離れたり、気がつくとまた近づいていたりすることもあるはずです。  

 まさに哲学者ショーペンハウアーの寓話「ヤマアラシのジレンマ」状態で、寒いのでくっつこうとしても双方の針が痛いので離れるといった繰り返しでしょう。  

 多くの自治体から外出自粛要請が出されていたとき、世間はほとんど家庭サイズにまで収縮してしまいました。  

 こうまで人との接触が絶たれてしまうと、誰もが寂しいと思うのは当然です。  

 しかし、この寂しさ に負けたらウイルスの思うツボです。幸い、スペイン風邪が流行った100年前にはなかったスマホもパソコンも今はあります。数人でオンライン飲み会を試してみても、それなりに楽しいかもしれません。  

 もちろん、そんなことでは解消できない寂しさが残るでしょう。それなら、それを貯めておくことを考えてみてはどうでしょう。寂しさを貯めておけば貯めておくほど、それが解放されるとき喜びも大きくなるでしょう。  

 美食家の北大路魯山人は、美食のコツについて聞かれてこう一言だけ答えたといいます。  

「空腹」  

 コロナ禍がある程度収束するまで、せいぜい腹を空かせておくとしましょう。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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