どうしてこんなに悲しいんだろう


 人とは何かという問いに、何か深遠な答えを持ち合わせているわけではありません。「人間」という言葉には、「世の中」という意味もあるそうです。  

 誰でも、たまに一人になりたいと思うこともあるはずです。人と人が交わると、摩擦も軋轢も生じます。しかし、それでも人は人を求めずにはいられない生き物です。  

 フォーク歌手の吉田拓郎さんは「どうしてこんなに悲しいんだろう」という楽曲のなかで、こう歌っています。 

「やっと一人になれたからって涙が出たんじゃ困るのサ  やっぱり僕は人にもまれて皆の中で生きるのサ」  

 確かに、人は人と繋がって世間をつくり、その中で生きていく存在なのでしょう。  

 しかし、コロナ禍に見舞われていれる今、人と人の間はソーシャルデスタンスと呼ばれる物理的距離やビニールのカーテンやマスクで隔てられています。コロナ禍が脅かしているのは、まさに人が人である所以はないのかという気さえしてきます。  

 厚生労働省は3か月ほど前、新型コロナウイルスについてこう言っていました。 

「持続的なヒトからヒトへの感染の明らかな証拠はない」  

 それが今、この感染症は国境も海も越えて広がっています。肌の色も宗教の別も関係なく、人と人が接する無数の連鎖を通じて世界を覆い尽くしつつあります。  

 政府は専門家会議の助言に基づき、人との接触を8割減らすよう繰り返し呼びかけてきました。  

 1918年、よく引き合いに出される「スペイン風邪」のパンデミック(世界的大流行)が始まりました。コロナ禍に見舞われている今、専門家会議のメンバーでもあるウイルス学者の河岡義裕氏がTBS系「情熱大陸」でこう語っていたのが印象的でした。

 「情けないのは(スペイン風邪から)百年経っても、やってることは『人に近づかない』ということか。医学が百年頑張っても・・・」  

 しかし、医学百年の頑張りがなかったら状況は今とは比較にならぬほど悲惨なものになっていたはずです。結局、この種の感染症はワクチンや治療薬ができるまで人との接触を減らすしか対処法はないのでしょう。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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