コロナ禍の逆境に耐える


  日本人は、季節の移ろいを「桜前線」「紅葉前線」のように花便りや葉の色づきの北上や南下で表します。南北に長い国土に季節の移り変わりを愛でる国民が住んでいるからでしょうが、外国にも似た例がないわけではありません。  

 日本の街を白とピンクの花で彩るハナミズキは、北米原産です。毎春、米国東海岸を開花前線が北上します。それをドッグウッドと呼びますが、南はフロリダから最北部のメーン州まで早春から晩春へと花便りがリレーされます。  

 米国史に名高い1607年のバージニアへのジョン・スミスの上陸は、満開のハナミズキに迎えられたといいます。今では同地やノースカロライナ州の州花となり、目を奪う華やかさで春の訪れを告げる特別な花として入植者らに愛されてきました。  

 明治に来日し、日本人が桜の開花予想を大事件のように報じるのに驚いたのは、米女性旅行家シドモアでした。彼女は日本の桜がワシントンに贈られるきっかけをつくりましたが、桜の返礼に米国から日本に贈られたのがハナミズキです。  

 ハナミズキは以前、アメリカハナミズキと呼ばれていました。アメリカヤマボウシやフロリダミズキなどの異名があるのも、そのいきさつを聞けばよくわかります。日本では病虫害に強く、手入れも簡単なことから庭木や街路樹として普及して街の景色を変えています。  

 春をもたらしてくれるハナミズキも、今年は新型コロナウイルスの感染拡大を伝える日米のニュースの背景で垣間見える程度です。ちなみに米国でのドッグウッドの花言葉の一つは、逆境に耐える愛といいます。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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