パス・ザ・バックを許すな

 

 英語で「パス・ザ・バック」というと、自分がとるべき責任を他人に押しつけるという意味です。「バック」はポーカーの親が誰かを示す目印で、転じて場を仕切る「責任」を表します。「パス・ザ・バック」では、それをサッと他人にパスするのです。  

 第2次大戦末期に亡くなったルーズベルトから大統領職を引き継いだトルーマンの執務机の上に、「ザ・バック・ストップス・ヒア」と書いた置物があったのは有名な話です。 「バックはここで行き止まり」という意味で、「最終責任は私が取る」というトルーマンの決意の表れでした。  

 しかし、時代が変わると自分の机の上に置かれたバックを国際機関のトップに投げつける大統領も現れます。トランプ大統領は新型コロナウイルスの世界最悪の感染拡大を招いた責任を問われ、「バック」を世界保健機関(WHO)に投げつけています。  

 そして〝中国寄り〟の対処姿勢により感染を世界に拡大させたとして、WHOへの資金拠出の停止を表明しています。このパンデミックの最中、世界各国の国際協力の基軸となっている組織に対する兵糧攻めです。  

 ただ、中国側の情報に依拠した初動の遅れなどで批判を浴びるWHOの対応も、のちにきちんと検証されるべきでしょう。  

 先の見通せないパンデミックの状況下、各国の指導者も下す決断とその責任の重さにたじろいでいるように見えます。まさに、世界史的な危機に見舞われています。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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