コロナ禍でインフォデミックが拡散する


 1890年(明治23年)、日本ではコレラの流行で3万5000人余りの死者が出ています。同年、東京と横浜で電話交換サービスが始まり、日本の電話の歴史がスタートしました。  

 すると、さっそく電話がコレラ菌を運ぶというデマが広がっています。加入者は戦々恐々とし、電話のベルが鳴ると逃げ出したという話まで記録されています。コレラの恐怖が、正体の分からない新しい技術と結びついて生まれたデマでした。  

 コロナ禍の感染拡大にともなう流言やデマで耳を疑うようなものは、欧州で広がった第5世代通信ネットワーク(5G)の通信がコロナ感染を広げるというデマです。これは、電話でコレラが伝播するというデマと同種の典型的な恐怖デマです。このデマで、英国では5G通信施設と目されたアンテナなどの焼き打ちが相次いだといいます。

 「インフォデミック」とは「情報」と「感染症の流行」の合成語で、デマや流言の爆発的拡散を意味しています。世界保健機関(WHO)が警告に用いましたが、今では、そのWHO自身がトランプ米大統領からの陰謀論めいた攻撃の標的となる始末です。  

 今まさに、差別や他者攻撃の温床となる不安が広がる感染症の流行期です。流言やデマ、フェイクニュースや陰謀論などインフォでミックへの免疫や抵抗力を身につけるのに、ある絶好の機会かもしれません。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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