次々と高校生を見舞う不条理


 野球で甲子園出場を目指していた高校生にとって、その大会が春に続いて夏も中止になるとは想像もしていなかったでしょう。  

 フランスの作家カミュは、ペストの流行で封鎖された都市を舞台に不条理な現実を生きる人間のモラルを問いかけた小説「ペスト」を書いています。  

 この作品で、医師の主人公は信仰や大義を振りかざすこともなく、自分の責務を誠実に果たすことで人間同士の連帯を生み出していきます。  

 貧しい家庭に育ったカミュは高校時代、サッカーをやっていました。 

「私に人間の倫理と義務を教えてくれたのは、サッカーというスポーツである」  

 スポーツを通じて、助け合いや勇気を学んだというのです。  

 コロナ禍で今、感染症の不条理がスポーツに打ち込んできた高校生の夢を次々と奪い去っています。  

 高校生は、その不条理の思いを記憶に刻み込むしかありません。そして、いつの日かカミュの言葉を思い起こすこともあるでしょう。   

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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