最悪のシナリオはコロナ禍が金融危機を招くこと


 コロナ禍で、実体経済への打撃が深刻化しています。  

 ブラジルなど新興国から投資マネーが流出し、自国通貨の急落で企業のドル建て債務が膨らみ苦境が深まっているのです。米国では、シェールオイル企業が原油価格の暴落に直撃され、破綻するところが増えています。  

 シェール関連など信用力が低い企業向けの融資は、これまで複数を束ねて証券化されて投資商品として売られてきました。ハイリスク・ハイリターンの投資商品ですが、世界的な超低金利下で〝有利な投資〟と見られてきたのです。つまり、バブルが形成されてきたのです。  

 米国では4月の失業率が戦後最悪となり、百貨店など大型の経営破綻が相次いでいます。日本でも、トヨタ自動車が今年度の連結営業利益を8割減と見込むなど企業業績の悪化が鮮明になってきています。  

 コロナ禍の蔓延が企業や個人の活動を自粛させ、需要を激減させているのです。  

 日米欧の中央銀行は3月以降、金融緩和を大幅に拡大し、市場や企業の動揺をひとまず抑えています。リーマン後の規制強化で自己資本を充実させた先進国の銀行は、今のところ企業の資金繰り支援に対応できています。  

 しかし、最悪な事態の金融危機の火種は消えていません。コロナ禍以前のカネ余りに乗じて債務を積み上げてきた新興国や、信用力が低い企業の先行き不安が収まっていないからです。   

 人口減少で国内の収益基盤が細ったメガバンクなど邦銀は、この〝バブル商品〟を大量に購入してきました。さらにリーマン後は新興国向け融資を急増させ、欧米銀に代わる最大の貸手ともなっています。  

 邦銀の多くが新興国経済やシェール企業などの動向次第では、多額の損失処理で自己資本が大幅に目減りする恐れを抱え込んでいるのです。  

 日米の株価は持ち直していますが、経済への悪影響がどこまで広がるかは依然として見通せません。   

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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