人類は文明を破壊する災厄から新たな文明を芽吹かせてきた
ペストが大流行した1665年、ロンドンでの混乱が記録に残っています。
「人々は耐えがたい混乱と苦痛のあまり身を持て余し、喚き散らし、狂気した人々が街頭を走り回る光景は陰惨を極めた」
ラテン語「アヌスミラビリス」は、訳すと「驚異の年」となります。
これは、同年から翌年のロンドン大火災に至る歴史的な災厄が続いた時代に書かれた詩人ドライデンの長編詩のタイトルにも使われています。ドライデンは、ペスト禍からの避難先で英国の再生を讃える詩を書いています。
アヌスミラビリスは、のちに古典力学の創始者ニュートンの偉大な業績を讃える言葉となります。ニュートンは、ペスト禍で閉鎖された大学から故郷に戻りました。存分に思索の時間を得た1年半の間に、万有引力の発見など3大業績を達成しています。
悲惨な疫病を逃れる〝巣ごもり〟から生まれたアヌスミラビリスは、考えようによっては人類にとって「驚異の年」として逆に大きな前進の時期でもあります。〝創造的休暇〟とも呼ばれるニュートンのアヌスミラビリスですが、コロナ禍で巣ごもりを強いられている人にも勇気を与える逸話でしょう。
コロナ禍で、日本ではテレワークが一気に進んでいます。「自宅からの発想」のネットワークで、世界を大きく変えることができるかもしれません。14世紀のペスト禍がルネサンスの触媒になったように、コロナ禍での体験は新たな技術や価値、産業の培養土にもなり得るでしょう。
国際通貨基金(IMF)が「世界恐慌以来」の経済危機というコロナ禍ですが、人類は文明を破壊する災厄から新たな文明を芽吹かせてきました。
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