日本企業の変化への胎動が始まった


 入社式は、新入社員を一堂に集めてトップが訓示する儀式です。男子結社や秘儀的集団に加入するための通過儀礼も、入社式と呼ばれています。  

 平凡社の世界大百科事典を手に取ってみると、西アフリカのクペル族が学齢期になった少年に課す儀礼が紹介されています。  

 学齢期を迎えた少年は、まず腹に鶏の血が入った袋を巻きつけられます。次に仮面をつけた男たちが少年を胴上げして柵の中に投げ入れます。最後に仮面をつけた男たちが槍で少年を突き刺す真似をします。  

 そして袋が破れて血が流れる様は、少年が死んだことを表します。こうした儀式を経ることで、少年は部族内の地位や権利を得られるようになるのです。  

 これまで日本企業の正社員は、職務変更や転勤に柔軟に応じる代わりに雇用が基本的に保障されていました。入社式は、皮肉を込めて言うとその仲間である〝社畜〟になるための儀式でもありました。  

 この点、日立製作所は、今年4月の入社式を「日立キャリア・キックオフ・セッション」という名前に変えて開く予定でした。新入社員に、会社に依存せず能動的に得意分野を磨いてほしいというメッセージを送るためでした。  

 しかし、この入社式は新型コロナウイルス対策で中止になりました。ただ、日本企業の通過儀礼にも変化への胎動が見えています。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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