コロナ過で、大人のための〝ライナスの毛布〟が必要


 スヌーピーの漫画「ピーナッツ」に、ライナスという名の幼児が登場します。彼が手放さない青い毛布は〝安心の毛布〟で、「ライナスの毛布」と呼ばれています。  

 児童心理学者の話によると、幼児が一人で行動できるようになると親と離れる不安をなくすために親代わりとなる毛布やぬいぐるみを持ち歩くのだといいます。親と一緒にいるような安心感の拠り所ですから、無理に取り上げてはいけないとされています。  

 こうした安心感を与えてくれるモノへの執着は、なにも幼児にかぎったことではありません。  

 新型コロナウイルスの感染の恐怖が心にわだかまるなかで、いつも通りの平穏な暮らしを支えてくれる日用品や食料を買いだめしたくなる衝動も〝ライナスの毛布〟心理でしょう。こちらは、ふつう〝矛盾の自己実現〟と呼ばれています。  

 東京都の小池百合子知事が週末の外出自粛などを都民に呼びかけた直後から、首都圏のスーパーで〝買い溜め騒ぎ〟が起こっています。冷凍食品や米、パンなどの食料品や日用必を買い求める人々が列をなし、一部商品が品薄となっています。  

 スーパーの協会では生産も物流もきちんと動いていると声明を出し、通常の購買行動を呼びかけています。過剰な買い溜めは商品流通を混乱させ、結局は安心どころか社会の不安をどんどん膨らませていきます。しかも、やがては自らもそれに巻き込まれるだけのことです。  

 このところ新型コロナウイルスの感染が急拡大する欧米のパニックをテレビやスマホなどで繰り返し見せられた人々は、かつてない不安や恐怖に突き動かされています。ここはひとつ、正確な情報と冷静な思慮という大人の〝ライナスの毛布〟を手放さないようにしたいものです。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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