小さくてもキラリと光るリーダーシップを見習え


 米東部ワシントン郊外に、人口2万人弱の小都市タコマパークがあります。米ソ核戦争の恐怖に震えた1980年代に、「非核都市」を先駆けて宣言してその名が全米に知れ渡っています。 

 同市が耳目を引いたのは、「非核」が名ばかりではなかったことです。日本と同じ「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」の非核原則にとどまらず、核兵器関連企業との契約を条例で禁じる徹底ぶりでした。  

 3年前、同市は国連が採択した核兵器禁止条約を初めて支持した地方議会となっています。この条約は、「核なき世界」の理念に連なります。核兵器の開発や製造から使用や威嚇までを包括的に禁じ、廃絶に至らせると規定しています。  

 残念ながら米国など核保有国はこぞって反対し、日本もそれに追随して発効の目途は立っていません。   

 その議論をするはずだった今春の国連での核拡散防止条約(NPT)再検討会議が、新型コロナウイルスの影響で延期される見通しだといいます。規模を縮小してお茶を濁すくらいなら、時期をずらしてもしっかりと議論すべきでしょう。  

 北朝鮮やイランの核開発は、もちろん大問題です。同時に、軍縮の義務を負いながら新型核兵器の開発に血道をあげる米露の振る舞いも看過できません。各国は、ともに翻意させるよう結束して迫る必要があります。  

 かつて非核の世論を動かした同市は今、化石燃料をゼロにする全米初の条例案を審議中です。今度は環境革命を牽引するといいますが、小さくてもキラリと光るリーダーシップに見習うところは少なくありません。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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