愚かなヒューマンエラーは避けられない
東西冷戦下の1983年9月26日、旧ソ連のミサイル監視システムの警報が鳴り響きました。米国から大陸間弾道ミサイル5発が発射され、本土に向かっていたのです。
到達まで20分しかありませんでしたが、ペトロフ中佐はそれでも〝異常〟を上司に報告しませんでした。なぜなら米国の核攻撃にしては5発のミサイルは少なかったし、監視システムもあまり信用できないと判断したからです。
結局、何も起きませんでした。まさに、監視システムの誤作動だったのです。ただ、ペドロフ中佐が上司に報告して反撃のプロセスが進んでいたら、全面核戦争になって恐れもあったでしょう。
毎年9月26日が「核兵器全面廃絶国際デー」に定められたのは、このペドロフ中佐の咄嗟の判断に由来するといいます。
176人が死亡したテヘランでのウクライナ機墜落では、イランが地対空ミサイルを誤って発射したことを認めました。本当の攻撃かどうかを見極めたケースですが、イランは ヒューマンエラーによる意図しない発射と説明しています。
イランがイラク駐留米軍を攻撃した日の出来事で、イランは米軍の反撃に備えて身構えていました。緊張のなかで旅客機が〝敵機〟に見えたのでしょうが、取り返しのつかない誤射でした。
戯曲「ハムレット」では、ハムレットは誤りによって宰相を殺めます。その娘オフィーリアは、悲しみで心を病みます。今回、〝全面戦争の危機〟さえあった〝緊張状態〟にウクライナ機は巻き込まれました。まさに、オフェーリアのようなものでした。
ともかく国と国とが敵対し、武力を使うのは〝誤射〟だけではなく、それ自体が愚かなヒューマンエラーというものでしょう。
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