アマビエ頼み


 コロナ禍に見舞われている今、アマビエという名の妖怪が出没しています。コロナ禍の拡大と足並みをそろえるように登場する頻度は増え、この妖怪を模したグッズや和菓子も登場しています。  

 アマビエは、古くは弘化3年(1846年)4月の瓦版に登場しています。添えられた挿絵には、肥後国の海に現れたアマビエが描かれています。長髪にくちばし、胴が鱗に覆われたアマビエの姿は愛らしく、ゆるキャラを思わせます。  

 妖怪研究家によると、アマビエは妖怪というより人魚やカッパのような「幻獣」の一種とみなされ、なかでも予言を残す「予言獣」に分類されるといいます。江戸の人々は、疫病が流行するたびにアマビエを門口に張ったと記録に残っています。  

 疫病のメカニズムも知らなかった当時の人々にとって、疫病は人知を超えた制御不能な出来事でした。アマビエの「私の絵を張れば鎮まる」というお告げは、さぞ頼もしかったことでしょう。  

 コロナ禍の沈静化、終息は依然として五里霧中のままです。誰もが、自身が感染するかどうかも含めて不安心理に苛まれています。コロナ禍対策の「3密」回避のための巣ごもり生活の鬱屈を晴らすには当分、アマビエに〝予言獣頼み〟するしかないようです。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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