武器を渡さないで危機感だけ煽る安倍政権


 戦争中、作家の山本周五郎は知人にこう告げられました。 

「陸軍当局と今、話してきたのですが、当局は『昨日の空襲では、市民の初期防火が良くなかった』と言っていました」  

 山本は、それを聞いてテーブルを叩いて怒鳴りました。 

「バカなことを言うものじゃない。戦争をするのは、軍隊じゃないか。しかし、軍隊は大編隊が襲いかかってきているのに、昨日は高射砲もろくに撃たず、戦闘機は一機も飛びやしない。それなのに、国民の初期防火が良くないもクソもあるものか」  

 当時、市民は焼夷弾に濡れムシロと火叩きだけを武器に立ち向かっていました。  

 今、国民は新型コロナウイルスの大編隊に外出自粛や在宅勤務を武器にして戦っています。一方、安倍政権は感染対策で緊急事態宣言を発出して人と人との接触機会を8割減らせと言っています。非常に高い目標ですが、誠実さのある国民はそれぞれにがんばっています。  

 それでも、感染対策が後手後手に回っている安倍政権から「在宅勤務が不十分だ」「自覚が足りない」などと求められます。しかし、安倍政権は感染対策で〝スピード感〟がなく、打つ手もチグハグです。  

 安倍政権の焦りはわかりますが、医療崩壊を阻止するための〝高射砲〟や〝戦闘機〟が十分に活躍しているかというと心もとないかぎりです。  

 飲食店は、今後の不安からなかなか店を閉じられません。サラリーマンの在宅勤務が進まないのにも、それぞれ事情があります。そこを支援しないで「国民の危機感が足りない」と言うだけでは、なんの解決策も見えてこないでしょう。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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