コロナ過が世界の政治的、経済的な地図を塗り替える

 1919年4月、米国のW・ウィルソン大統領の主治医の手紙にはこう書かれていました。

 「ウィルソン大統領は昨日木曜日、重病になった。39・4度以上の高熱と大量の下痢や咳の発作は抑えられたが、病状はきわめて重かった」  

 ウィルソン大統領は当時、第1次大戦の講和会議に出席中で、世界中で流行していたスペイン風邪にかかっていたのです。米代表団からも死者が出ましたが、幸い大統領は回復して会議に復帰しています。  

 その会議で、ウィルソン大統領はスペイン風邪の闘病で気力を失ったのか、それまで強硬に反対していたドイツへの厳しい賠償要求をあっさり認めています。このドイツに過酷な講和は、やがてヒトラーの台頭を招きます。これが、スペイン風邪のウイルスが第2次大戦をもたらしたといわれる由縁です。  

 ともかく、感染症は歴史的に古代アテネの衰退を招いたことを初めとして政治の地図も大きく塗り替えてきました。英国のジョンソン首相の新型コロナウイルス感染の報には驚きましたが、各国の閣僚クラスの感染も次々に伝わってきています。この先も、要人の感染は避けられそうにありません。   

 このパンデミックが、政治的に利用されかねない懸念も各国で高まっています。欧州連合(EU)加盟国ハンガリーで成立した非常事態法は事実上、無期限に超法規的強権を政権に与えるものになっています。似た動きは他の加盟国にもあり、EUから懸念の声も上がっています。感染拡大をめぐる米中の鞘当ても、それぞれの政権の内輪の都合の産物でしょう。  

 ともかく、パンデミックが終息したとき、世界の政治的、経済的な地図は大きく塗り替えられていることでしょう。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

0コメント

  • 1000 / 1000