コロナ禍とパラレルワールド

 19世紀、サジェというフランス人女性教師が42人の生徒の室内遊戯を監督していました。ある生徒が、ふと外の花壇を見るとサジェ先生が花を摘んでいます。  

 室と花壇の先生を見比べると、どちらもサジェ先生です。そこで生徒が教室の先生に触ると、サッと姿が消えました。本物の先生は、花壇のほうだったのです。  

 一種の都市伝説ですが、昨今のリモート授業のような奇談です。  

 コロナ禍で、世界的に学校の授業のみならず、オンラインによる幽体離脱で家から勤務先の会議に顔を出す人が多くなっています。飲み会でも、リモート飲み会やテレ合コンなどという幽体離脱の新機軸も登場しています。

 日常のイベントも今、オンラインの世界への引っ越しが進んでいるのです。  

 パラレルワールドとは、SF小説に出てくる現実と並行した「もう一つの世界」のことです。コロナ禍により鬱屈な生活が強いられる今、体から離れた「もう一つの自分」をオンラインのパラレルワールドでどう動くかによって現実も変わってくるでしょう。  

 しかし、人々がパラレルワールドに引っ越すと、現実に巣くう悪意や悪知恵も一緒に越してきます。  

 世の中の動きに合わせて、さっそくオンライン会議システムに入り込んで情報を盗む連中が動き出しています。嫌がらせにおよぶ連中も現れ、コロナ禍の不安に乗じた詐欺も横行しています。  

 目に見えないウイルスへの恐怖が高じて、それがリアルな他者を差別・攻撃する人間性の困った性も引っ越してくるパラレルワールドの世界です。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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