無知のベール

 米国の哲学者ロールズが「公正な社会」を考えるための思考実験に用いた方法に、「無知のベール」と呼ばれるものがあります。  

 それは、あるとき〝天から舞い降りた〟と仮定されたベールが被験者の頭を包んでしまったとき「どういう社会を選択するのか」という思考実験です。  

 被験者は設定上、〝無知のベール〟を被せられているので自分の性別や人種、能力、職業、学歴など自分が何者であるかがわかりません。むろん自分が金持ちか貧乏かもわからず、まったく〝無知な立場〟となるのです  

 そのとき、被験者がどのような原理を持った社会に住むことを選ぶのかが試されます。性別や人種、資産の有無などもわからないという設定ですから当然、それらの属性によって差別や自由の制限を受けることのない社会を選ぶでしょう。  

 そこでは生産効率のために個の自由が奪われ、少数者が排除されるような社会は絶対に選ばれません。  

 公正な社会を考えるのに「無知のベール」が必要とされるのは、それが自分と他者を入れ替えて考えさせてくれるからです。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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