スペイン風邪のウイルス感染拡大で日本の死者は約39万人だった

 東京五輪2020に関して最近、安倍首相やその周辺、五輪関係者から「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして開く」という言い回しが聞こえてきます。この「打ち勝った証し」という言い方は、あくまで過去形にしか過ぎません。  

 しかし、気になるのは「打ち勝った」という未来図に惑わされ、今まさに全力を尽くすべき感染との戦いに楽観が生じないかということです。  

 国際オリンピック委員会(IOC)と日本側は、延期した五輪を旧日程の1年後の来年7月23日開幕と決めました。これで確かに目標はできましたが、新型コロナウイルスという敵はそんなにヤワではないでしょう。  

 開催日を決めても、延期にともなう膨大な作業があります。開催国の日本はウイルスと戦いながら、これにも対処しなければなりません。そうした2正面作戦を強いられながら開催日が迫り、感染が終息しない事態も予測されます。  

 そうなったとき、昭和の戦争指導者みたいに現実から目を背けて精神論を唱えるわけにもいかないでしょう。 「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして開く」と言うのなら、これまで人類が襲われてきた感染症の歴史を冷静に見つめたいものです。たとえば1918年から始まった「スペイン風邪」の流行は国内でも3波におよび、とくに第2波が酷かったといいます。  

 日本でも当時、内務省衛生局が報告書をまとめたのは4年後でした。やっとウイルスとの戦いが過去形で書かれ、結果的に死者が38万8727人に達していたのです。  

 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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