覇気に欠けていた安倍首相の緊急事態宣言

  新型コロナウイルスとの〝戦争〟を続けている各国指導者は今、不確実性の霧のなかをさまよっています。そんななかで、世界でもホットスポットとなった米ニューヨーク州のクオモ知事は卓越したコミュニケーション力で州民のみならず全米の信頼を集めているといいます。 

「誰かが誰かを非難するなら、私を非難せよ。他に責任のある者はいない」  

 この言葉はロックダウン(都市封鎖)に際しての発言ですが、トランプ大統領がさらに完全封鎖を口にすると「州に対する宣戦布告だ」と啖呵を切り、撤回させました。  

 クオモ知事の真価は、派手なスタンドプレーにあるのではないといます。毎日の記者会見では、感染状況や対策を詳細なデータと最新の事実に基づいて解説しています。市民への要請は具体的で、人命最優先の視線には揺るぎがありません。  

 これこそ危機的な状況において情報と理解とを共有して信頼を築く、リスクコミュニケーションのお手本でしょう。  

 安倍首相は4月7日、ニューヨークの惨状が明日の我が身かもしれない首都圏など7都府県を対象に法に基づく緊急事態宣言を発令しました。  

 その説明は、残念ながら霞が関の官僚が作成した文章を頭のなかでなぞっているようなものでした。リスクコミュニケーションから生まれる信頼によって、まさに国民が覆われている不安や恐れの〝霧〟を払ってくれるようなメリハリの利いたものではありませんでした。要するに、これといった〝信頼〟が抱けないのです。  

 そして、戦いに臨む〝サムライ〟としての毅然とした覇気、「誰かが誰かを非難するなら、私を非難せよ。他に責任のある者はいない」といった姿勢が少々不足していたような気がします。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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