新型コロナウイルスの感染拡大で食糧不足の恐れ

 国連(UN)専門機関の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)、関連機関の世界貿易機関(WTO)の3機関のトップが4月1日、現在進行中の新型コロナウイルスの感染拡大の危機に各国当局が適切に対応できないと世界的な食料不足が発生する恐れがあると警告しました。

 「食料品の入手可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品不足が起きかねない」  

 背景には、世界の多くの政府が新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせるためロックダウン(都市封鎖)に踏み切ったことで国際貿易と食料品のサプライチェーンに深刻な影響が出ていることがあります。  

 実際、ロックダウンされた都市の住民がパニック買いに走り、スーパーマーケットの陳列棚が空になるなど食料品のサプライチェーンの脆弱さが露わになっています。  

 これは根拠のない脅しではなく、2007年の世界金融危機後にはコメの生産国であるインドとベトナムがコメの国内価格の上昇を避けようと輸出を規制した結果、コメの国際価格が急騰して一部の発展途上国で暴動が起きています。  

 長期的には、封鎖命令と人の移動制限によって農業労働者の確保や食料品の市場への出荷が不可能になり、農業生産が混乱するリスクが心配されています。  

 具体的には、速やかな打開策がないと米国ではメキシコからの季節的農業労働者の不足で多くの作物の生産がリスクにさらされます。西欧でも、北アフリカと東欧からの労働者の不在によって同様の結果を招きかねません。  

 この危機は始まったばかりで、人口と輸出国としての役割の大きさから先月3月下旬から全土で3週間のロックダウンに入ったインドの状況が輸送やロジスティクスの面で鍵を握るでしょう。  

 イタリアとフランスでは、スーパーマーケットのレジ係が新型コロナウイルスに感染した例もあり、一部の労働者は感染予防措置や防護具が不十分だとして職場を放棄しています。米国でも、高級スーパーのホールフーズ・マーケットで職場放棄が起きました。  

 とにかく、食糧不足を招かないためにはサプライチェーンを維持する上で欠かせない食料の生産・加工・流通に携わっている労働者の健康を守ることでしょう。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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