与謝野晶子の政府批判は今に通じる

 第1次大戦末期のスペイン風邪を背景にしたキャサリン・アン・ポーターの小説「幻の馬 幻の騎手」の一節に、こういうものがあります。 

「救急車が都合できない。ベッドも空いていない。医者も看護婦も見つからない。みんな忙しくて。劇場は全部、店とレストランはほとんど閉まっている。通りは一日中葬式だらけだ」  

 まるで、今日の欧州や米国のようです。この自身の臨死体験を基にした作品は、当時の医療崩壊の産物ともいえます。  

 与謝野晶子はスペイン風邪が流行していた当時、日本政府を批判しています。晶子は11人の子を持つ母で、家族の多くが感染していました。 

「(政府はなぜ)大呉服店、学校、興行物、大工場、大展覧会など多くの人間の密集する場所の一時休業を命じなかったのでしょうか」  

 母の目には、政府の対応が手ぬるく見えたようです。  

 新型コロナウイルスの感染者急増で、東京都は外出自粛を呼びかけました。このままでは、感染爆発による医療崩壊やロックダウンに追い込まれる〝重大局面〟を迎えるかもしれません。欧州などの医療崩壊、ロックダウンを目の当たりにすると、事態は楽観視できません。 

 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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