政府の新型肺炎対策は後手後手

 紀元前430年、古代アテネの政治家ペリクレスはこう演説しました。 

「我々の政体は少数者の独占を排除し、多数者の公平を守ることを中心とし、民主政治と呼ばれる。我々のポリスは、ギリシャが追うべき理想の顕現である。市民は人生の広い諸活動に通暁し、自由人の品位を保ち、知性の円熟を期待することができる」  

 この自由と民主政の理想を説いた演説は、今も心を打たれます。     

 しかし、半年後、アテネは空前の疫病に見舞われました。演説を記録した史書には、その後に信仰や法、道徳をあざ笑うかのように無慈悲に市民の命を奪っていった疫病の惨禍が記されています。   ペリクレスが誇った市民の自由に根ざす秩序は疫病の蔓延であえなく崩壊し、かつてない無秩序がもたらされました。疫病は、このように繁栄する文明の最も大切な理想さえ破壊してしまいます。  翻って専門家が「今後1~2週間が急速な拡大に進むか収束できるかの瀬戸際」と指摘する新型肺炎でも、まさに医療体制などの秩序が瀬戸際に追いつめられています。  

 政府も感染拡大に備え、感染者が増えた地域の対処方針などを決めています。しかし、ウイルス検査も対象が限られるなか、すでに見えない感染の拡大がうかがえるのが現状です。政府の対策も後手後手に回っている印象は否めず、瀬戸際に追い詰められた言葉も虚しく聞こえます。しかし、政府は決して対策の遅れを認めとうとしません。  

 国民も古代とは違い、適切な医学的知見の説明さえあれば感染リスクを高める行動を控えるはずです。恐怖や不安のもたらす〝無秩序〟を防ぐのは、事態を先取りした対策と情報への信頼感です。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

0コメント

  • 1000 / 1000