情報機関が紳士とは笑止千万

 米国CIA(中央情報局)のアレン・ダレス元局長は、米ソ冷戦の初期から米CIAを率いて海千山千の情報機関に育て上げています。生前、こう書いています。 

「国家および国民の運命が危機に瀕しているときは、紳士は他人の手紙も盗み読むものである」  

 ダレス元局長が「紳士」と書いているのは、1929年当時のスティムソン国務長官の言葉を皮肉ってのことです。スティムソン国務長官は「紳士は他人の信書の盗み読みはしない」と言い、米国が行っていた他の国の外交公電の暗号解読を中止させています。米国も第2次大戦で覇権国家として登場する以前は、情報の世界でもずいぶん純朴なところがあったようです。  

 ただ、この一件では解雇された暗号専門家が軍縮会議での日本の外交暗号を解読していたと暴露して日米で一騒ぎありました。こちらは、冷戦期からつい最近までの話です。  

 CIAと西独情報機関がスイスの暗号機器製造会社を秘密裏に買収し、その製品を用いていた同盟国を含む各国の通信を解読していたといいます。この機器は、米独が解読できるよう手が加えられていました。しかも、日本も含む約120カ国に売られていました。仁義なき盗み読みは、敵も同盟も関係ないのです。  

 米国は今、中国通信大手ファーウェイの機器に対し情報窃取の〝裏口疑惑〟を指摘しています。情報機器の製造段階から仕込んだ〝ペテンの先達〟としては、裏口はないほうがおかしいという考え方に染まっているのでしょう。  

 今時、米国の情報機関を紳士と思っている人はいないでしょうが、紳士でいるにしても周到な目配りとしたたかさが欠かせない現代です。

 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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