がん検診に寄与するCエレガンス

 地球上には、無数の虫がいる。 Cエレガンスは線虫の一種で、泳ぐ姿が〝優雅〟なのでそう名づけられた。今では、世界中の研究室で科学の実験に使われている。  

 ーベル生理学・医学賞の受賞者で、分子生物学者のシドニー・ブレンナー博士は1963年、生物の発生過程を調べるために体長1ミリのCエレガンスを使うことを提案した。どの細胞がどう分裂するのか、どの神経がどんな行動を担っているのかについて調べ上げ、細胞分裂や細胞死、細胞の分化が遺伝学的にプログラムされていることを明らかにしている。  

 Cエレガンスは高等生物だが、構造がシンプルだ。体が透明で、実験での観察が容易である。飼育も簡単で、生きたまま凍結保存ができる。謎の多い生命現象への答えが、これまで〝生きた試験管〟とも呼ばれているCエレガンスを使った実験、観察から次々と導き出されてきた。オワンクラゲから発光物質を見つけた下村脩さんのノーベル賞受賞にも、Cエレガンスが大いに貢献している。  

 今年、Cエレガンスの鋭い嗅覚を利用したがん検診が日本で始まる。がんの有無が、ステージ0でも高精度でわかるという。がん特有の尿の臭いを好み、近寄ってくるのだ。尿1滴を提供するだけで済み、9800円で15種類のがんを一度に調べられるのも利点である。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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