日本から新しい時代を切り開く〝構想力〟が失われている

  呪術効果を期待して、「ワカメを食べると髪が増える」と唱える人がいます。アスリートのなかには、縁起担ぎで絶好調だった日と同じ道を通って試合場へ行く人もいます。  

 英国の人類学者フレーザーの「金枝篇」には、「類感呪術」の例が紹介されています。類感呪術とは、似たものは似たものを生むという想念に根ざす〝まじない〟のことです。  

 札幌市の2030年冬季五輪開催地への立候補が決まりましたが、今回はライバル都市との間で30年以降の大会の開催を分け合う〝約束〟になっているという話も聞こえてきます。もちろん、30年は札幌が最有力とのことです。  

 日本では今、〝類感呪術〟の効果を期待するかのように「東京五輪から大阪万博、札幌冬季五輪へ」という高度成長期の黄金のロードマップを再踏破したいと夢見ている自治体や企業が少なくありません。    

 こうした「夢よ、再び」といった類の巨大イベントのラインアップを見ると、自治体や企業には〝まじない〟しか新しい企画がないのかと残念な気がします。まさに類似シナリオの再演は、この国から新しい時代を切り開く〝構想力〟が失われていることの証だという感じです。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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