がん検診に能力を発揮するCエレガンス

  地球上には、無数の虫がいる。 

「Cエレガンス」  

 これは線虫の一種で、泳ぐ姿が優雅なのでそう名づけられた。世界中の研究室で、研究開発の実験に使われている。  

 分子生物学の泰斗シドニー・ブレンナー博士は1963年、生物の発生過程を調べるため体長1ミリの「Cエレガンス」を使うことを提案した。どの細胞がどう分裂するのか、どの神経がどんな行動を担うのかを20年かけて調べ上げ、精密な〝生命地図〟を作成している。  

 Cエレガンスは高等生物だが、構造がシンプルだ。体が透明で、観察が容易です。飼育も簡単で、生きたまま凍結保存できる。謎の多い生命現象への答えが、この生きた試験管のCエレガンスから次々と生まれた。オワンクラゲから発光物質を見つけた下村脩さんのノーベル賞にも、Cエレガンスが貢献している。  

 2020年には、Cエレガンスの鋭い嗅覚を活かしたがん検診が日本で始まる。がんの有無が、ステージ0でも高精度で判別できるという。がん特有の尿の臭いを好み、近寄ってくるのだ。尿1滴を提供するだけで済み、9800円で15種類のがんを一度に調べられるのも利点である。小さな虫が人の健康を見守り、支えてくれるのだ。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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