覆面文化は権力への反抗的な気分を表す風俗
江戸時代の初め、覆面禁止令が発令されていました。その内容は、覆面を着用した〝不審者〟を見つけ次第に斬り捨てるというものでした。
かといって、江戸時代に覆面姿が消えたわけではありません。逆に、禁止令のおかげで覆面はお上への反抗的な気分を表す〝風俗〟となり、多彩な覆面のバリエーションが「〇〇頭巾」などと呼ばれて流行したのです。つまり、禁止令が〝覆面文化〟を作り出したのです。
一方、香港市民のデモでの覆面着用も中国共産党への不服従のシンボルとなりつつあります。デモ隊のマスク着用を禁じた「覆面禁止法」では、すでに多数の逮捕者も出ています。過激グループの孤立を狙った覆面禁止法ですが、監視社会を嫌悪する市民の反発も広がっています。
折しも米国は中国の顔認証の人工知能(AI)などの監視技術が少数民族の弾圧に使われていると批判し、監視カメラ企業などに制裁を科しました。貿易交渉の新たなカードでしょうが、今や人権問題の焦点となった顔監視技術の一党支配です。
この民主的統制がおよばない〝権力の監視の目〟はやがて国民の心の中に入り込み、自発的服従をもたらしていく心配があります。香港では、過激な行動に同調しない市民もマスクをつけてデモをしています。自由を窒息させる監視を拒む、覆面による意思表示でしょう。
香港の抗議運動では、暴徒化への批判や街頭行動疲れも伝えられています。今後、非暴力にして不屈、日常的でしなやかな抵抗のシンボルとなる〝覆面文化〟が生まれるかどうか注目されます。
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