再建と復活

 さて、再建と復活――。  

 作品『レ・ミゼラブル』で有名な作家ビクトル・ユゴーは、パリのノートルダム寺院の古い塔内の暗い片隅の壁に「宿命」という文字が刻まれていたのを発見しています。それは、中世の人が刻んだものとされています。  

 ユゴーは1831年、この「宿命」という文字に刻まれた人間の悲痛さを感じ取り、それに着想を得て宿命に翻弄される人々を描いた小説『ノートル=ダム・ド・パリ』を書いています。  

 その12世紀に着工された世界遺産ノートルダム寺院の大聖堂が大火に見舞われ、尖塔や屋根が崩落するなど甚大な被害が出ました。荘厳なる美と歴史を背負ったノートルダム寺院の大聖堂はパリ市民のみならず、人類全体の宝でした。それが、大火で失われたのです。  

 修復工事中の失火が原因と見られていますが、フランス革命にも2度の世界大戦にも難を逃れた大聖堂が失火で炎上したとはなんという皮肉な宿命なのでしょう。  

 しかし、喪失感のなかにも再建の声が出ています。再建と復活が、大聖堂のこれからの宿命と信じたいものです。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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