平成は格差や貧困、引きこもりが広がった時代だった

 10年ほど前、世界遺産の白神山地へと続く秋田県藤里町の名前が全国的に知られるようになったきっかけは豊かな自然の恵みではありませんでした。それは、何と町に住む現役世代の1割近い113人が引きこもりの状態にあることが判明したからです。そのうち約半数は、40歳以上の住民でした。  

 そこから、町の社会福祉協議会による引きこもり解消の取り組みが始まります。就労体験の場を設け、1戸1戸を回って資格取得や仕事の情報を提供し続けたのです。その甲斐もあって多くの人が引きこもりから脱し、後に「藤里方式」と呼ばれるようになっています。   

 国が実施した全国調査では、40~64歳の引きこもりの人は推計で61万人にも上っています。その数は、15~39歳の約54万人より多いのです。中高年の引きこもりを対象にした調査は、今回が初めてでした。  

 ただ、以前から「引きこもりはむしろ中高年の方が深刻。それなのに実態が分からない」との指摘はありました。今回の調査結果を受けて、厚生労働相は、「大人の引きこもりは新しい社会的問題だ」と述べています。専門家からは、「実数はもっと多いはず」といった声も上がっています。  

 明治維新の立役者、西郷隆盛は次のような教訓を残しています。 

「明るい場所にいる者は、暗い所にいる者を見ることはできない」  

「平成」の30年間は、引きこもりに限らず貧困や格差が広がった時代でもありました。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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