eスポーツにも光と影がある

 表だけ、裏だけのコインがないように、光と影は分かちがたいものです。夏目漱石は『草枕』で、山路を登る主人公にこう語らせています。 

「明暗は表裏のごとく、日のあたるところにはきっと影がさす。喜びの深きとき憂いいよいよ深く、楽しみの大いなるほど苦しみも大きい」  

 喜びと憂いは一体であって、たがいの丈に応じて大きくなるのだということです。 

 さて、eスポーツの名で対戦型ゲームが拡大の一途です。立派な選手がいて、魅了される観客もいます。大企業やプロのサッカークラブなどが関わり、市場も拡大中といいます。高校では、部活動になっているところもあります。  

 eスポーツを見ていると、喜びと憂いが競うように大きくなっていく実例という感じがします。世界保健機関(WHO)は今年5月下旬、「ゲーム障害」を依存症として正式に認めました。  

 ゲームを止めることができずに、学業にさわったり、健康を害したりする人が世界的に見ても増えているそうです。主に若者で、日本も例外ではありません。WHOは、依存症の治療が必要な疾病と位置づけるといいます。 

『草枕』の主人公は、こう続けます。 

「少し食えば飽き足らぬ。存分食えばあとが不愉快だ」  

 便利なものほど弊害が深刻になり、最近の科学技術につきものの強い明暗のコントラストを感じます。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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