〝自分探し〟の海外行脚

 フランスの作家で、哲学者のポール・ニザンの著書「アデン、アラビア」は、次の有名な書き出しで始まります。 

「20歳が人生で最も美しい時とは言わせない」  

 そして、こう続きます。 

「この世界のなかで、自分の居場所を知るのはきついものだ」  

 若者の希望は、将来への不安と表裏一体でしょう。 

「海外でお金を稼ぎながら世界を旅してみたい」という夢を抱く若者は、少なくありません。ただ、これまでその手段が限られていました。  

 海外滞在するには、ビザなど法律上の問題があります。仕事を見つけるのも大変だし、外国語の力も試されます。まったく知らない土地での生活には、危ないワナも多いでしょう。  

 ネットは、これらの課題を軽く乗り越えられる手段です。たとえば東欧から来日し、都内の安宿に長く滞在する若者はイベントや繁華街、路地裏などを動画で撮り、母国の言葉で解説しながら投稿サイトのユーチューブで公開しています。  

 その再生回数によって支払われる広告収入は、旅のすべての資金を賄うには遠いでしょうが足しにはなるでしょう。  

 日本でも若者の間では「動画投稿は楽しく儲かる」という認識が広まっているのか、一昨年は中学生男子のなりたい職業の3位がユーチューバーという調査結果も発表されています。  

 ただ、なくてもともとの小遣い稼ぎならともかく、海外での生活資金まで賄おうとすると壁も高いはずです。  

 実際、米ユーチューブ本社を銃撃した犯人は再生回数を制限されて収入が減ったことを恨んでの犯行だったといわれています。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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