日本はMMTの成功例

 米国発の極論とも言える考え方が今、注目を集めています。 「自国だけの通貨を持っていると、その通貨を限りなく供給できる。だから、国の財政赤字が増えても気にしなくていい」  これは「現代金融理論」(MMT)と呼ばれ、米ニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授が提唱者です。日本は、〝MMTの成功例〟と指摘する声もあります。  

 確かに、政府は景気浮揚のため財政支出を拡大してきました。日銀は金融緩和や銀行経由で国債を引き受け、その拡大を下支えしてきました。ただ、その結果、公的債務の額は国内総生産(GDP)の約2倍になってしまったのです。  

 この間、日本では経済破綻も極端なインフレも起きませんでした。それどころか、むしろデフレ傾向が問題になっています。日本経済は、ひょっとするとMMTの正しさを証明しているのかもしれません。  

 バブル崩壊以降、大半の日本人や日本企業は将来が不安だから支出を切り詰めてきました。みんなが家族のために、会社の存続のために少しずつ支出を削って頑張ってきたのです。  

 この結果、極端なインフレは起きず、海外から無用な借金もせずに済みました。つまり国の政策というより国民の涙ぐましい努力が経済危機を何とか防いできたのでしょう。  

 こうした努力は、経済指標では測りにくいものです。ただ、日本人が生活を守るために懸命に続けた知恵の結晶を、MMTなどと机上の理屈で呼んでほしくないものです。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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