こうして監視下が進む

 最近、中国発のニュースで人工知能(AI)やネットを駆使した監視システム「天網工程」のことを聞いて最初は驚き、やがて怖くなりました。このシステムは、14億人の身分証などを中心としたデータベースと全国各地の2000万台もの街頭カメラがその根幹を成しているといいます。  

 個人を識別する機能で、信号無視といった違反の取り締まりや犯罪者の摘発に威力を発揮するそうです。もちろん、スマートフォンの位置情報や買い物の履歴から市民の日常も把握できるようになるといいます。北京市の公園のトイレには顔認証でぺーパーが出る仕組みまで導入されたと聞くと、やはり空恐ろしくもなります。  

 こうした雑踏に投網を打つような情報収集は、人々の幸福な暮らしに役立つとも思えません。これを「習近平国家主席の思想を憲法に書き込む方針」といったニュースを合わせて耳にすると、政権に盾突く人物や予備軍をマークする目的が見え隠れします。ネットでの検閲対象語「敏感詞」も、増加の一途だといいます。  

 人を労役から解放し、情報格差をなくすはずのAIやネットが、人の自由を縛りつつあると見えます。歴代の王朝は国内の統治や思想の統制に知恵を絞りましたが、今、現れ始めているのは電脳の宝刀を手にした新たな装いの国のようです。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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