遠くへ行きたい
さて、旅――。
永六輔作詞、中村八大作曲で1962年に世に出た曲「遠くへ行きたい」は、長く続くテレビ番組のテーマソングに使われました。
「知らない街を歩いてみたい どこか遠くへ行きたい」
仕事に疲れると、つい口ずさみたくなる歌です。世代を超えてなお愛され、今でも命脈を保っています。旅に出ること、未知の土地を巡ることは気ぜわしい日常を転換し、心をリフレッシュする特効薬です。
この曲が長く歌い継がれてきたのも、旅への憧憬をたしかな言葉でつづっているからでしょう。 松尾芭蕉は、旅についてこう述べています。
「予もいづれの年よりか、片雲の風にさそはれて、漂泊の思ひやまず」
芭蕉の願望は、現代人の胸の奥にも脈打っています。
永六輔の「遠くへ行きたい」の歌詞は、こう続きます。
「知らない海をながめていたい」
昨今の旅の情報といえばグルメも温泉も、もっぱら「○○してみたい」です。しかし、「ながめてみたい」ではなく、時間の経過を忘れて見知らぬ海と向き合っているイメージなのです。
旅は、やはり「したい」ではなく「いたい」が一番でしょう。
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