インセルが殺人者になる瞬間

 Lookism(ルッキズム)と呼ばれる「見た目で人を差別すること」は、現実に存在します。  見た目が魅力的でないと感じている人たちは、収入が低く、雇用の機会も少ないと明らかにした研究もあります。また別の研究から、裁判の陪審員は見た目が良い人に有罪判決を下さない傾向にあるとされています。  

 しかし、恋愛や性的関係の文脈で起きる差別となると、男性と女性はまったく違った反応をします。専門家によると、好きな人に振られたとき女性は自分を責めることが多いのに対し、男性は相手を非難しがちだといいます。  

 ノーザン・イリノイ大学カンセリング学部のスザンネ・デッゲス・ホワイト学部長は、 こう指摘しています。


 「男性は拒絶を、自分の男性らしさに対する挑戦、もしくは自分の社会的立場に対する侮辱と受け取る傾向にあります。一方、女性は拒絶されると感情的に傷つく傾向にあり、自分に何か足りないものがあったから拒絶されたのだと考えがちです。そして女性は拒絶を乗り越えようとしますが、男性は借りを返す必要を感じます」  


 いわゆる「インセル」が集う掲示板では、この「借りを返す」ことがしばしば議論されています。なかには自分を振った女性や女性の恋人に対して、暴力で仕返しをすべきだと書き込む過激なユーザーもいます。それが、殺人に繋がることもあるのです。  

 インセルとは「インボランタリー・セリベイト」の略語で、「不本意な禁欲主義者」を意味しています。自分の容貌を醜いと自覚している異性愛の男性のことで、女性から蔑視されているせいで恋人ができないと信じているのです。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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