社会に対する恨みは無差別殺傷事件の明確な動機となる

 6月9日に発生した新幹線車内での「無差別殺傷事件」は、10年前に起こった「秋葉原連続殺傷事件」を思い起こさせました。  

 あの事件から10年が経った今、ネットの掲示板やSNS上で犯人だった加藤智大死刑囚(当時25歳)の犯行当時の境遇や心境に「共感」、「理解」を示す書き込みが絶えないといいます。 

「逮捕された加藤が当時、この息苦しい社会で味わっていた『逃れられない孤独』がわかるような気がする」 

「不器用な加藤の生き方、考え方に共感する」  

 もちろん、彼らが共感するのは格差社会が生む「劣等感」や「嫉妬心」といった「心の痛み」でしょう。  

 そうした一人である派遣社員の30代の男性は、加藤死刑囚に対する共感をツイッターでこう呟いています。 

「友人はいるが、つき合いでは常に緊張感がともなう。相手に嫌われるかもしれないと思うと、本音で話すことができない。気兼ねなく本音を吐き出せるのは、やはりネットくらいだ」  

 彼は子ども時代から、母親を筆頭に周りから何かと欠点ばかりを指摘され、人に言えない劣等感を背負って生きてきたといいます。  

 こうした「負の感情」の鬱積が、今でも格差社会の荒波にもまれたまま「生きづらさ」に繋がっているのです。  今では、軽度の「うつ病」を患っているといいます。  

 今後も彼のような「心の痛み」をリアルな現実でうまく昇華できない「犯罪予備軍」が、「殺す相手は誰でもよかった」といった〝息苦しい社会に対する殺意〟をもって凶悪事件を引き起こすことが心配されます。

 実際に、東海道新幹線の3人を殺傷した事件で、22歳の容疑者3人はこう供述しているといいます。

「社会を恨んでいる。誰でもいいので殺そうと思った」

 彼らにとって、「社会に対する恨み」は明確な殺意、動機となっているのです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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