医療が人から食べる力を奪う

 人を含めた生き物は、基本的に何かを食べたり飲んだりすることで生命活動を維持しています。もちろん、飲食ができなくなると待っているのは餓死。それが、大自然の摂理というものです。  

 しかし、医療技術の進歩もあって、今では生き物のなかで人だけが大自然の摂理に反した生き方を始めています。  

 たとえ自力で飲食する力がなくなったとしても、点滴や胃瘻(いろう)などで栄養を体に注入するという医療の力で生き永らえることができるようになったのです。  

 胃瘻とは腹壁を切開して胃の中に管を通し、そこから栄養や水分、医薬品などを投与するための医療的な処置。それは、人工的水分栄養補給法とも呼ばれています。  

 ただ、入院などで治療を受けたことをきっかけにして、みずから食べ物を噛んで飲み込めなくなった老人が増加中といいます。  

 それを放置しておくと咀嚼(そしゃく)機能の衰えはますます進み、新たな病気の発症や認知症などを招きかねません。  

 咀嚼とは、摂取した食べ物を歯で咬み、粉砕すること。それによって消化を助け、栄養を取ることができます。ふつう、噛むと表現されています。  

 医療の現場では今、患者が自分の口で噛んで飲み込むという「食べる力」が軽視されがち。

 さらに問題なのは、まだ自分の力で食べることができる高齢者からも食べる力や喜びを奪っていることです。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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