成功するには「健康なエゴイズム」も欠かせない

  成功するには、自分をブランディングすることが欠かせない――。

 そう大げさに考えている人は、意外と少なくありません。

 ただ、成功を手にするにしても、だれもが首相や大企業の社長、先端産業の起業家などに成りたいわけではないのです。大半の人は、とりあえず小さな成功を手に入れたいだけ。

 もちろん、たとえ夢や目標が小さなものであっても、それなりにリスクを取っていく覚悟が求められます。

 自然界には、いろいろ光る生命が存在しています。

 たとえばヤコウタケは自然界でもっとも明るく発光するキノコとされ、それを10個ほど集めると暗闇でも小さな文字が読めるほどの明るさだといいます。残念ながら、今のところ何のために光っているのかよくわかっていません。

 多くのキノコには、ヒスピジンという物質が内在しています。それと光るキノコだけが持っている酵素が反応することで、発光現象が起こることはわかっています。たぶん、ヤコウタケは厳しい自然界で生き残っていくためにみずから光を放っているはずです。

  人のブランディングも、それと似たようなものではないでしょうか?

 だれもが日ごろ、何らかの成果を上げて輝きたいと思っています。

 それで成果を上げて光っている人、それができずに輝きを失っている人、焦りだけが先走って却って燻っている人などといろいろ。

 そうした成果を上げたり、成功を手にしたりするには、みずからの利益を最大化しようとする「健康なエゴイズム」も欠かせません。

 ハワイ出身で元大関の小錦八十吉さんは1997年11月、現役最後の場所となった九州場所の13日目で負け越しが決定。

 小錦さんの自伝『はだかの小錦』(読売新聞社)を読むと、小錦さんは負け越しが決まっても千秋楽まで土俵に上がるつもりだったといいます。それを見てもらいたいので、ハワイに住んでいる家族も日本に呼び寄せていました。

 ところが、そうした思いは日本相撲協会によって断念させられています。

 同協会の鏡川理事長は当時、小錦さんの引退についてこう語っています。

「死に体の者を土俵に上げるわけにはいかない。咲くも花なら散るのも花だ」

 一方、小錦さんは自伝でこう明かしています。

「帰化して日本人になったんだから、ボクも桜の花にたとえてもいいんだけど、やっぱり桜よりも故郷のハワイの海の方が忘れがたい。(中略)この波のように、ボクも思いきり岸に打ち寄せ、みごとに砕け散ろうと思った。小錦らしさにあふれた相撲を取って。そしてボクは散った」

 小錦さんは、現役の力士として最後の「健康なエゴイズム」を発揮したかったはずです。

 それが、日本相撲協会の意向によって阻まれてしまいました。それでも置かれた立場にめげることもなくタレントとして新しい道を切り拓いています。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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