「できる人」になるには地頭力の強化が欠かせない

 当たり前のことですが、だれもが何かを考えながら生きています。

 人が考えるのは、たとえば何らかの課題や問題などをうまく解決しようと思っているからです。

 その点、ネット情報への過度な依存は何も考えようとしない思考停止を招く恐れがあります。さらに検索ツールの発達でコピペ族が増え、かつてないほど自分で考えることの大切さが再認識されています。

 最初から答えが用意されていない問題を効率的に考えるには、いわゆる「地頭力」が試されます。地頭力とは、未知の領域で答えのない問題を解いていく能力のこと。それは、次の3つの思考力から成り立っています。


①結論から先に考えて仮説を導き出していく思考力

②全体を見渡して考える思考力

③物事を抽象化して単純に考える思考力 


 もちろん、地頭力は鍛えることができます。

 その際、頼りになるのが「フェルミ推定」という推論の手法。フェルミ推定とは、何らかの手がかりを頼りに実際に調査するのが難しいような数量を推定し、素早く概算すること。

 たとえば「全国にベトナム料理の調理士は何人いるか?」という問い――。

 それに何の情報もなくアプローチしていくと、概算の過程で日本の総面積が必要となります。

 もし東京~博多間の距離が約1200キロと知っていたら、日本列島を長方形に見立てて大まかな総面積を割り出すことができます。それで一定の面積にベトナム料理の調理士が何人いるかと仮定すると、全国にいるベトナム料理の調理士の数が推定できるというわけ。

 文字通り推定するわけですが、ポイントは一定の面積に調理士が何人いるかという数字の仮置き。それを元に、それらしい答えを導き出せればいいのです。

 そうした思考法が「フェルミ推定」と呼ばれているのは、ノーベル物理学賞受賞者で「原子力の父」として知られている物理学者エンリコ・フェルミに由来しています。

 フェルミ推定で地頭力を鍛えた頭の回転が早い人は、まったく知らない分野のことでも理解が早かったりします。

 破壊的イノベーションが進んでいる企業の採用現場では、ただ単に頭がいい人ではなく地頭力のある人材が求められています。

 マイクロソフトやグーグル、マッキンゼー、ボストンコンサルティングなど外資系企業の採用試験でも、そうした問題が出題されています。

 地頭力に加えて常識や既成概念にとらわれない思考力を身に着ければ、まさに心の体幹を鍛えた「できる人」の誕生というわけです。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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