タレント集団「EXILE」は非エリート層に支持されている

 版画家でコラムニストだった故ナンシー関さんは、こう指摘していました。

「日本人の5割はヤンキー」

 いわゆるヤンキーは地元意識がやたらと強く、考え方の基本として仲間内の論理を何よりも優先します。反知性主義で、自分の社会的な位置についてほとんど関心がありません。

 日ごろ連れ立っている仲間から四面楚歌になることを恐れ、仲間と違ったことができずに集団で行動するといった同質性があります。

そもそもヤンキーとは、いったい何物なのでしょうか?

 一般的なイメージは、こんな感じでしょうか。

「ダボダボのズボンを穿き、何かと唾を吐きながらコンビニの前や盛り場にたむろしている」

 ズボンをずり下げた特有の格好は反学校のシンボルで、教師や生徒への威嚇や脅しのツールにもなっています。

 ただ、ズボンをずり下げるのはアメリカの囚人の格好です。アメリカの刑務所では、首吊りなどの自殺防止のために囚人にはベルトが支給されません。そこで囚人は、ズボンをずり下げたまま着用しているのです。

 そうしたことを知ってか知らずか、ヤンキーはそれをマネしているだけのこと。

 とにかく、物事をいろいろと沈思黙考しません。日ごろ言動が何かと常識外れで、体を張ってまで社会のルールや道徳、常識などから外れようと突っ張っています。

 感情の赴くままにバイオレンスやエロスを剥き出しにして、大好きな「気合い」というノリで生きているのです。

 それで得られるものは、極めて庶民的な恋愛や家族愛、絆といった保守的な人間関係。かつてヒットした深田恭子さん主演の映画『下妻物語』には、そうしたことが象徴的に描かれていました。


 深田さん演じるゴスロリ少女が、ヤンキーのダチを助けようとして啖呵を切ります。いきなりのヤンキー気質の発露に、深く考えないヤンキーの観客は胸のすく思いをするのです。

 ゴスロリとはファッションのジャンルの一つで、リボンやフリルを多用し、トータルな色調を黒や紫などで暗めにまとめたもの。その特徴は、毒気のあるシュールなカワイイを前面に押し出しているところ。  

 タレント集団「EXILE」には、男らしさや仲間、礼儀といったヤンキーの匂いが色濃く感じられます。ヤンキーの世界では、仲間との絆が何よりも大事。それを体現しているのが、まさに「EXILE」。

 メンバーは礼儀正しく、先輩を立てます。ヤンキー気質を体現した男らしさもあり、どちらかと言うと非エリート層に支持されています。

 世に中、非エリート層が圧倒的に多いわけで、エンターテインメント業界のビジネスモデルとしては完成形に近いものがあります。

 歴史書『古事記』にも、ヤンキー気質の生き様が書き記されています。それを読むと、原初的な何かに触れたような気にもなります。そうしたヤンキー気質は、日本文化の最深部で今までずっと引き継がれてきたのかもしれません。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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