起業家の夢と現実


 一攫千金を夢見て、起業家になりたいと思っている人は少なくありません。ただ、夢や目標を持って起業したとしても必ずしもうまくいくとはかぎりません。 

 たとえば飲食業界――。

 飲食業界では、和食やフレンチ、イタリアン、中華、ファミレス、居酒屋など数多くの業者が乱立して飽和気味。そのため、飲食店同士の低価格争いや過剰サービスといった生き残り競争が激しくなっています。

 そうした消耗戦に追い打ちをかけているのが、お酒を飲食店ではなく自宅で飲む「家飲み」が消費者のブームになっていること。

 アサヒグループホールディングスは14年、家飲みについて消費者の意識調査を実施。それによると、調査対象者の5人中4人が週2回以上もビールや缶チューハイなどの家飲みをしていました。理由として、次のようなことが挙げられていました。

「外で飲むよりもリラックスできるから」

「家計に優しいから」

 サントリーの調査によると、家飲みされる缶系のアルコール市場の成長率は毎年3~5%。なんと6年連続で、過去最高の数字を叩き出しているのです。

  そうした家飲みは、飲食業界にとって無視できないライバルとなっています。

 実際、消費者の家飲みが増えたことで居酒屋業界では苦戦している大手チェーン店も少なくありません。なかには、売り上げの低迷が続いて赤字幅の拡大が止まらないところもあります。

 飲食に関して、消費者のライフスタイルは外飲みから家飲みへとシフトする流れになってきているのです。

  業者側も、売り上げ増につながるヒットを狙って飲食店で提供する料理やお酒の種類をあれこれ増やしています。しかし、飲食店の特徴を何とか打ち出そうとしてもなかなかうまくいきません。飲食店の飽和状態や商品の過剰供給のなかで、差別化がますます難しくなっているのです。

 次の一手として、接客サービスでの差別化を図ろうとする動きもあります。ただ、どこかの飲食店がヒットするサービスを生み出しても、直ぐに別の飲食店もそのマネをするというイタチごっこが続いています。 

 まさに、飲食店サバイバル時代――。

 なかには飲食店をオープンしても来客数が少なく、アッという間に廃業や倒産に追い込まれているところも少なくありません。

 ここで、飲食業も含めた会社の生存率をみてみましょう。

 日本経済新聞の調査(1996年、新設法人8万社が対象)によると、設立1年で生き残っているのが60%。なんと起業された会社の40%が1年以内に廃業、倒産に追い込まれているのです。

 さらに国税庁の調査(05年、約255万社が対象)によると それは5年で15%、10年で6・3%、20年で0・3%、30年で0・025%となっています。つまり、創業から30年経っても生き残っているところは1万社のうち2・5社しかないという厳しさです。 

 要するに、起業家の4割は創業1年で会社が倒産、廃業の憂き目に遭っているのです。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

0コメント

  • 1000 / 1000