なぜイチロー選手は本番で高いパフォーマンスを発揮するのか?
巷には自己啓発本があふれ、そこでは何かと「悲観主義より楽観主義が好ましい」としてポジティブ思考が推奨されています。
だが、本当にそうなのでしょうか?
大リーグのイチロー選手は、数々の金字塔を打ち立てている最中にこう語っています。
「自分は、これまで失敗の連続でした。いつも、明日は打てなくなるのではないかと不安になります」
そうした言動から判断すると、悲観主義者に映ってしまいます。
ただ、大リーグで史上初の10年連続年間200安打以上、ピート・ローズ選手の大リーグ歴代最多安打4256本を抜き去るなど大活躍。42歳を超えても、なお修行僧のように自分を追い込んで日々の準備を怠りません。まさに、時計が埋め込まれているかのような同じリズムで野球という仕事に打ち込んでいます。
そうした努力について、こう語っています。
「小さなことを重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道なのです」
悲観主義者のなかにも、イチロー選手のように高いパフォーマンスを発揮して成果を上げる人がいるのです。
だれでも、自分ならできると踏んでいるゾーンを超えた活動に対して不安を抱いてしまいます。そうは言っても、何事もリスクを取って挑戦しないと成功などあり得ません。
そして、挑戦には失敗がつきもの。
だれもが何かに挑戦しようとするとき、「成功したいが、失敗したくない」といったジレンマに悩まされます。ただ、どちらにしても挑戦しないと結果なんて出てきません。
防衛的悲観主義者――。
アメリカの精神分析医でウェルズリー大学のジュリー・ノレム教授は、何かを思い悩むことで高いパフォーマンスを発揮する人をそう呼んでいます。
楽観主義者は最高のパフォーマンスを思い描いて、それを何とかして達成しようと考えます。
一方、防衛的悲観主義者は成功体験があっても次は違う結果になるかもしれないと心配します。プレゼンテーション(プレゼン)で、前回はうまくいっていても次は失敗するのではないかと気がかりなのです。
現場で説明する言葉を忘れるのではないか、資料を入力しているタブレットがフリーズしてしまうのではないかといった心配です。そのため事前にプレゼンの練習を繰り返し、資料のバックアップを用意するなど細かく対策を練っていくのです。
そこが単なる悲観主義者とは違っているところで、心配や不安をモチベーションに変えて結果的に本番では高いパフォーマンスを発揮するというわけです。
イチロー選手は、すでに大成功を収めているのに日々の努力を忘れないで身近な明日に備えています。
まさに、イチロー選手の生き様こそ事前の準備で不安を解消していく防衛的悲観主義者の成功例の典型的なケースなのです。
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